第1回定例議会代表質問 2023年2月16日

2023-05-26

「公民連携」は、民間に利益を与えるものであり、公的責任の立場で区政を運営すべきについて

【 黒沼議員 】
まず、官民協働の弊害について伺います。
大田区は、昨年12月、広範なステークホルダーとパートナーシップを深め、地域課題の解決のためと大田区公民連携SDGsプラットフォームの設置をしました。参加企業は東急やトヨタ、キヤノン、日本生命、野村不動産など32社に及びます。松原区長は、民間企業の皆様とそれぞれが保有する強みを生かして取り組む旨の挨拶をしています。民主政治にとって大事なのは、主権者である区民が豊かな生活を築くことです。社会評価の基準は、底辺にいる人々の生活の質の向上こそ社会を評価することであり、生活者のための政治が求められます。ところが、政府がよりどころとしている新自由主義は、これまで国民の暮らしを守ってきた公共性を否定し、大企業にもうけさせるための官から民への政策を強めてまいりました。民にできることは民にとの言葉や、自助、共助、公助の真逆のやり方で、市場に委ねさせる市場万能主義、規制緩和推進の立場を取ってきました。
新自由主義の特徴は三つです。第1は、公共の応能負担から民間企業の応益負担原則とし、公では用いてはならない受益者負担の原則を持ち込まれ、保育料、介護保険料、国保料などが次々に引き上げられ、生存権も保障されない弱肉強食のジャングル思想とも言うべき考え方が蔓延するようになりました。大田区行政は、利用する人と利用しない人に受益の違いが出るので、人件費を含む負担まで利用者に負わせて、施設使用料の値上げを当然視しています。これは税金で賄わなければならない部分まで納税者に負担させ、租税主義をねじ曲げて、弱肉強食の市場主義を取り入れてしまったと言えます。地方自治法の税は住民の福祉の向上のために使うという原則をねじ曲げたものと言っていいと考えます。
第2は、規制緩和と民営化方式で公共部門を空洞化したことです。しかし、市場原理がむき出しに適用できないのは、地方自治法で規定している公共の福祉があるからです。公共部門でつくって営利企業取り込まず、教育、医療、保健衛生、福祉、雇用、環境、文化などを守ってきました。
第3は、イデオロギー攻撃です。多国籍企業に変貌した大企業は、福祉国家を邪魔者扱いにし、その手段とするのが規制緩和、民営化、官民協働です。なぜこのようなことをするのでしょうか。実は、資本主義そのものが健全に機能することをしなくなっているからです。大企業は活動領域を世界に広げたために、日本経済は電気産業のみならず空洞化し、自動車産業もEVでは世界10位にも入っていないなど衰退しています。電気産業では、1980年代、世界一で、メイドインジャパンは高品質の代名詞でした。しかし、現在は韓国、中国、台湾に押され、見る影もありません。スマートフォンも同様です。半導体分野も世界史上50%から6%にすぎなくなっています。多くの企業が競争の渦に巻き込まれ、経営破綻し、大量の失業者を生み出しました。大田区の中小企業はそのあおりをもろに受け続けてきています。しかし、大企業はそれを国民のせいにし、自己責任という言葉で国民に押しつけています。こうしたことが続く限り、ますます国民と中小企業が過剰生産、倒産、失業、貧困、格差が広がるだけです。こうしたときに、日本資本主義は今日、企業の社会的責任を放棄し、社会維持費用を払わないようにし、国民に押しつけてきており、その結果、国民生活はますます苦しくなっています。内部留保が積み上がっても、投資できない大企業は、政府与党と手を組んで国民の国税、地方税に目をつけました。その方式が官民協働です。官民協働に、大田区はこともあろうに積極的に取り入れようとしつつあります。

●そこで伺います。官民協働は、このようにあってはならない市場取引の原則を官から民へ、受益者負担といううたい文句で持ち込み、公的責任を否定し、民間大企業に利益の機会を与えるものです。大田区と契約した企業がほとんど内部留保をふんだんに蓄えている大企業であることでうなずけます。市場取引の原則で公的資金に群がり、利益を上げようとする仕組みを知っているでしょうか。お答えください。

【 企画経営部長 】
まず、官民協働という言葉でいわれたご質問でございますけれども、私どもは公民連携としてこれを推進しておりますので、この呼称でご答弁申し上げます。近年、超高齢社会の到来、個人の価値観の多様化、あるいは加速度的に進展する情報化社会、さらには未曽有の災害がもたらす危機的状況など、社会の複雑性が増す中で、地域課題の解決はより一層困難さの度合いを高めております。区はこうした社会の変化に柔軟に対応し、持続可能なまちづくりを実現していくために、これまでの行政が単独で行う取組に加えまして、民間企業や大学等が有する専門的な知識、ノウハウ、資源を生かす公民連携の手法を取り入れることとしてございます。区が行う公民連携は、区と民間企業等が双方の強みを生かして、共に地域課題の解決に取り組み、質の高い区民サービスの提供を実現していくものでございますため、市場原理に委ね、公的責任を否定するようなものでは全くございません。
また、民間企業との連携を持続可能なものとしていくためには、企業が単なるボランティア、社会貢献ではなく、本業を通じて社会課題の解決を図っていくことが重要でございまして、行政単独では対応困難な問題の解決や住民福祉の向上という大目的が達成されるのであれば、連携の中で、公共性が担保された形で企業が利益を上げることは何ら否定されるものではございません。そのため区は、企業がビジネスをしながら社会課題の解決を図っていくことも想定をいたしまして、令和4年1月に大田区公民連携基本指針を改定しました。今後も、公民連携デスクや公民連携SDGsプラットフォームなどを通じまして、大企業、中小企業を問わず様々な企業等との連携を強化いたしまして、区民、民間企業等、行政の真の三方よしが実現する持続可能な区政運営を推進してまいります。

指定管理者制度では、サービス向上にはならないことについて

【 黒沼議員 】

次に、指定管理者制度について伺います。
大田区は、指定管理者制度と委託事業を経費節減とサービス向上だと言ってきました。もし直営と同等の人件費を保障しようとするなら、区は直よりも多い金額の契約をしなければなりません。それならしないほうがましです。区が経費節減しようとすれば、民間事業は福祉分野は8割が人件費と言われますので、人件費削減です。利益を上げるためには人件費を削る以外にありません。具体的には賃金の低い非正規に置き換えられ、官製ワーキングプアが増えてきました。このためサービス低下が起きます。大田区は、2010年、大田区指定管理者制度検討委員会を立ち上げ、報告書作成をしています。検討委員会は、区は、アウトソーシングを積極的に進めてきたが、利用者制度を利用料収入と施設維持管理経費のバランスを取れることで導入を進めてきたとあります。このことは、民間の市場原理主義を取り入れて、納めた者のみにサービス提供する保険原理と同等の受益者負担にしてしまいました。租税主義と社会原理を捨て去ってしまったのです。地方自治法に基づく自治体の本当にサービス向上するには、そこで働く人の待遇を改善することが条件です。民間企業は直営と異なり、サービス向上も利益を上げるためです。区民のためではありません。

●そこで伺います。指定管理者制度で経費節減とサービス向上が成り立つはずがありません。基本的に直営に戻すべきです。お答えください。

【企画経営部長】

本制度は、公の施設に係る管理運営手法として、平成15年の地方自治法改正に伴いまして導入されたものでございます。民間事業者等が有する専門性やノウハウを活用することにより、サービスの質を向上するとともに、施設の設置目的を効果的に達成することを目的としております。本区においては、平成16年度に男女平等推進センター及び南六郷福祉園の2施設で初めて導入して以降、現在ではスポーツ施設、文化施設、産業振興施設、社会福祉施設など134か所で導入をしてございます。指定管理者制度を導入したこれらの施設においては、民間ならではの多様な雇用形態に基づく開館日の拡大や、サービス提供時間の延長のほか、自主事業によるイベントの充実等、各施設において柔軟な運営が行われてございます。
また、それぞれの施設の設置者である区といたしましては、サービスの質を担保するため、全ての施設で毎年モニタリングを実施しておりまして、満足度調査におきましては、利用者の皆様から高いご評価をいただいております。区では今後とも、指定管理者制度の活用等を通じまして、各施設が有する可能性を十分に引き出すことにより、利用者のニーズにきめ細かく対応しまして、質の高いサービスを提供してまいります。

区内経済振興には内需拡大が不可欠であるが、ハネダピオはその役割を果たせていないことについて

【黒沼議員】

次に、ハネダピオについて要望します。
政府が昨年、2022年に新しい資本主義のフォローアップを閣議決定した内容は、量子技術、AI、バイオものづくり、再生・細胞医療、遺伝子治療を挙げ、DX、GXへの投資を強調していますが、このようなやり方では、企業の競争力の劣化と企業家精神の衰退を招き、日本の産業の停滞は克服できないと考えます。ところが、昨年決算年度で行われたハネダピオでのイベントは37回余行われ、うち10回が区内企業、27回がベンチャー企業、DX企業関係で、イベント名は、羽田スマートシティEXPO、IoT仲間まわし、デジタル化の先進事例、デジタルについて考える、リクルート社による副業、デジタルについて考える田園都市国家構想応援団交流会、ICTを活用して社会課題解決を図る、自動運転シンポジウム、台湾半導体シンポジウムなど、まさに政府のやり方でした。区内企業のヱビナ電化工業のガラス貫通穴加工など大田区関連が少しありますが、これでは当初掲げた区内産業と結びつけ、その発展を図るという目標は達成できません。日本の産業競争力を復活させるためには、科学技術政策も含め、根本的な総括もし、踏みとどまって、検討し直して、内需産業の再構築に切り替えるべきです。
では、本当に区内中小企業、小規模企業の皆さんが望む内需産業とは何かです。2020年に発表された委託報告書によれば、区内操業のメリットとして、空港が近いはたった5.4%、受注先が多く立地が24.1%で1位です。空港に頼る企業は多くありません。ハイテク技術の製品化をしている大森西地区の関鉄工所、上田製作所、平川製作所などを視察させていただきましたが、仲間まわしを見事に生かして、6年越しで製品化した製品などすばらしい努力です。加えて、競技用車椅子の実用化、さらに、医療機器分野、農業機器分野の3分野などに支援を強化する仕組みを強化し、内需を高めることこそ求められています。内需を高めるためには、ハネダピオのようなやり方ではなく、現在頑張っている区内中小企業全体の技術を生かし、真の仲間まわしを公的に位置づけて福祉、農業、医療、自然エネルギーなどの分野でオーダーメイド製品開発、実用化の支援策に切り替えるべきです。そのことが区内労働者の雇用拡大、賃金引上げ、中小企業の社会保障負担の軽減で区民の生活を豊かにすることです。こうした内需拡大の方向に区内産業政策を切り替える再構築をすることを求めておきます。

●伺います。大田区の来年度予算のゼロカーボンシティー推進に向けた事業者向け支援は、事業目標を達成する規模になっていません。次の改善が必要です。中小企業融資あっせん制度ですが、返済を考えると、借りられる事業者はごく限られると考えます。融資ではなく補助金事業に切り替えるべきです。ゼロカーボンシティー推進のためには、補助率50%、限度額2000万円に変更することを求めます。お答えください。

【産業経済部長】

来年度予算案に関わる産業経済分野の取組に関するご質問でございますが、特定の限られた取組でゼロカーボンシティーの目標が達成できるとは考えてございません。区では、2050年のゼロカーボンシティー実現を目標に掲げ、現在策定中の(仮称)大田区脱炭素戦略に基づき、今後、様々な取組を推進していく予定でございます。予算案の産業経済分野で取り上げた取組は、こうした目標を実現していくための貴重な、また、大きな第一歩であると考えてございます。ゼロカーボンシティーの実現は、行政、区民、事業者がそれぞれの責任に基づき、協力しながらその取組の効果を高めていかなければなりません。今般の予算案の概要でお示しした取組につきましては、事業者の皆様による脱炭素社会の実現に向けた取組を大きく後押しをし、その意識を高めることで区内全体への波及効果を生じさせていく大変重要で意義あるものと考えてございます。
また、中小企業融資あっせん制度ですけれども、金融機関で取り扱う通常の融資に比べ有利な条件で資金調達が可能となり、かつ一定の金利負担を区が本人に成り代わって直接行うことで、区内中小企業の操業環境を維持する取組でございます。補助事業とは目的が異なることから、委員お話しのような対応を行うことは考えてございません。なお、委員がご質問の中でハネダピオの取組を全面的に改めるべきとございましたが、ご質問の中にあった具体的な企業様につきましては、ハネダピオの取組につきまして全面的に賛同いただいていることを申し添えさせていただきます。

【黒沼議員】
●最後に伺います。始まっている新型コロナウイルス特別資金返済に、多くのまち工場の皆さんが景気回復していないのと物価の急激な高騰で支払い困難に陥っています。そこで、返済の延長と、その間、発生する利子を区が補助することを求めます。お答えください。

【産業経済部長】
新型コロナウイルス対策特別資金につきましては、一昨年の8月末をもってこの資金は受付を終了しまして、その後、引き継いだ通常の一般運転資金の利子補給をさらに加算する特例的な対応、これにつきましては、この間約1年にわたって延長し、現在も継続してございます。特別資金につきましては、据置期間12か月を含む返済期間を最大108か月として、個別の返済条件につきましては各金融機関と事業者の間で確認、合意の下で融資が実行されているものでございます。区が実施しております融資あっせん制度では、与信判断は各金融機関が行っており、返済の延長を含む融資条件の変更について区が関与する余地はございません。なお、特別資金の返済条件の変更でございますが、金融機関と事業者の間で合意がなされ、それが区の制度の範囲内で行われているものであれば、区に報告をいただいた案件については、利子補給の対象としております。

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