平成28年第3回定例会 一般質問

2016-10-17

平成28年第3回定例会 一般質問
開催日:平成28年8月21日

大田区の住宅政策について質問します。住まいは人権です。

 住まいは全ての区民にとって生活の基盤です。所得の多い、少ないにかかわらず誰もが必要、不可欠とするのが住まいです。ヨーロッパではこうした福祉的観点で住宅政策が実施されてきていますが、大田区の住宅マスタープランの内容は、区民に真に必要な住宅政策とは言い難いものです。しかも、公営住宅法の位置づけがまったく無視されています。公営住宅法は国、及び地方公共団体が協力して、健康で文化的な生活を営むに足る住宅を整備し、これを住宅に困窮する低額所得者に対して、低廉な家賃で賃貸し、又は転貸することにより、国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与することを目的として制定された法律です。大田区住宅マスタープラン作成の同年に変更された「住生活基本法」に基づく「国民の住生活の安定の確保及び向上の促進に関する基本的な計画」には「住宅困窮者が多様化する中で住生活の分野において憲法25条の主旨が具体化されるよう公平かつ的確な住宅セーフティネットの確保を図っていくことが求められている」と記され、住宅は人生の大半を過ごす欠くことのできない生活の基盤であり、家族と暮らし、人を育て、憩い、安らぐことのできるかけがえのない空間であるとともに、人々の社会生活や地域のコミュニテ―活動を支える拠点でもあります。住宅は「都市や町並みの重要な構成要素であり、安全、環境、福祉、文化といった地域の生活環境に大きな影響を及ぼすという意味で社会的性格を有するものである。」と住宅の大事な中身と位置づけが明らかにされています。これはとてもよく考えられた文章だと思います。続けて住生活基本計画は「住宅は個人の私的生活の場であるだけでなく、豊かな地域社会を形成する上で重要な要素であり、個人が生き生きと躍動し、活力、魅力があふれる社会の礎として位置付けることができる」とも述べています。

 大田区は役割を果たしているとは言い難い状況が住宅応募状況にあらわれています。区民の求めているのは、公営住宅法に示されている低所得者への低廉で安価な公営住宅です。それは過去5年間の区営住宅の申し込み状況に表れています。2011年、申込者1294人、倍率38.1倍、2012年申込者1345人、倍率49.8倍、2013年申込者1037人、倍率41.5倍、2014年申込者607人倍率20.2倍、2015年申込者1345人、倍率64.0倍となっています。シルバーピアも2011年、世帯申込者220名、倍率73.3倍、単身申込者、513名倍率51.3倍、2015年世帯申込者169名、倍率14.1倍、単身申込者、420名倍率35.0倍と区営住宅同様、圧倒的に不足しています。

 2001年に改定された大田区住宅マスタープランにはかろうじて公的住宅の供給目標を決めていましたが区営住宅120戸、シルバーピア380戸という極めて少ない目標でした。応募率に示されるように、区民の実情に見合った計画が無いことが問題なのです。この背景に、大田区当局がとってきた「住宅は私的財産であり、公的な支援や補助の対象ではない」との立場があるのではないでしょうか。しかも改定された2011年大田区住宅マスタープランでは充足しているということで5年間供給実績ゼロです。5年前の改定時に建設計画を持たなかったからです。

Q1、そこで質問です。申し込み状況に見合った計画をつくるべきです。公営住宅法第3条の地方公共団体は常に区域内の住宅事情に留意し、低額所得者の住宅不足を緩和するために必要があると認めた時は公営住宅の供給を行わなければならないとあります。区はこの立場に立ち、必要な公営住宅を建設すべきです。お答えください。

次に「住生活の安定の確保」にとって最大の課題は住居費負担です。

 2016年の「大田区高齢者の住まいの確保に関する基本方針」には高齢者の所得の状況、支出できる月額費用、家賃の負担額、月額利用料金など詳細に記されています。

 しかし大田区住宅マスタープランには、これを保障する家賃の項目がありません。収入が少ない年金者や低賃金の若者は払える住居費の低家賃住宅を求めています。私は、国交省が住宅宅地分科会に提出した資料と総務省の「消費実態調査」を調べてみました。30歳未満の勤労単身世帯の1ヶ月当たりの平均消費支出に占める住居費の割合は69年の5%から09年には男性20%、女性31.1%といずれも大幅に負担が増えています、賃貸住宅に居住する低額所得世帯は民間賃貸居住の28%、公営住宅入居者の収入は月10万4千円以下が約80%などです。これらはマスタープランでの3万6千戸が流通過程にあり充足していると言いますが入居できる家賃を示さないで流通過程にあると言っても絵に描いた餅です。

Q2、そこでお聞きします。大田区住宅マスタープランには家賃、所得の状況の記載がありませんが、高齢者住宅方針に記されていると同様、住居費についても位置づけて盛り込むべきです。10年ごとに改定されるプランは今年、5年目で折り返し点です。お答えください。 

 マスタープランには、大田区は住宅戸数の伸びが世帯数の伸びを上回っており、2008年時点であき家も4万4千戸ありそのうち8割以上の3万6千戸は流通の過程にあると考えられるとしていますが肝心の家賃が位置付けられていません。

 こうした時に政府の住宅宅地分科会で民間の空き家・あき室を活用した準公営住宅構想が出されています。国土交通省は耐震性などの基準を満たす空き家の民間アパートや戸建て住宅を「準公営住宅」に指定。子育て世代などに課すことを認める、家賃も助成検討するとして2017年の通常国会に関連法案提出を目指すと日経新聞に報じられました。

Q3、そこでお聞きします。3万6千戸の流通過程にある住宅を有効活用するため、「民間住宅の空き家を活用した家賃補助による準公営住宅構想はあるでしょうか、お答えください。

 同じく家賃助成で伺います。結婚、出産を希望する若年世帯、子育て世代が安心して暮らせる住生活の実現について、区民住宅で実施されている家賃助成を、民間住宅に広げて支援制度を拡充するよう求めます。 区の実施している助成制度は区民住宅の新婚世帯への助成で49世帯のみです。低廉な公営住宅の設置はもちろんですが民間にも拡大して若者への住宅費助成制度の創設を求めます。お答えください。
 

次にシルバーピアについて伺います。

 住宅マスタープランではシルバーピアについて「借上げに応募する民間オーナーが少ないことがあげられる」と整備面で語られています。

 しかし、シルバーピア制度は貸主にとって家賃の確実性、見守りの好条件、20年契約で実に計画的に資産運用を考えられる制度です。オーナーが少ないとの認識は間違いで、応募の条件の改善が必要です。物件の実情に見合って申し込めないという声を耳にします。年に1回だけではその機会を逃すと1年以上待たなくてはならない、相当資産に余裕がある人でないと申し込めない。「提出書類が煩雑でついに断念」という声や、「書類が複雑で不動産に売買した方がいい」という声も聴かれます。要望があるが残念ながら実らないのです

Q4、お聞きします。オーナーの要望にいつでも応じられる区の体制と書類準備を簡潔にできる援助体制を求めます、お答えください。
ぜひ一年を通して申し込み受付体制にできないでしょうか、お聞きします。

次に、マンション関連で伺います。

 2015年9月に、東京都住宅政策審議会が「東京におけるマンション施策の新たな展開について」と題する答申を出しました。都では歴史上初めてです。

 マンションで何が問題になっているかというと①居住者の高齢化②マンションの30%以上空き家のスラム化③マンションそのものの高齢化などの問題が顕在化しています。特に老朽マンションに対しては建て替えか改修か迫られている状況から調査したものです。政府・国交省は建て替え促進の立場に立っていますが多数派は改修です。立替困難の理由は費用の問題です。都の「答申」はおおまかに実情を反映されていると言えます。しかし、答申は基本的な考え方として、①、自助努力で取り組み事が基本②、市場機能の活用、など大きな問題点を指摘しなければなりません。

Q5、お聞きします。改修によるマンション再生に対するさらなる拡充を求めます。一気に行わずに安く工事を進めていくなど工夫が必要です。専門家のアドバイザーも必要です。大田区は耐震改修でピロティなど部分的改修にも補助金を出すなど進めていますが改修のための大幅な補助金の増額と制度の拡張が必要です。お答えください。

 ここで指摘しなければならないことがあります。大田区は、高級マンション建設に多額の税金を投入してきたことです。京急蒲田西口駅前再開発ビルに約320戸と糀谷駅前再開発ビルに約300戸、庶民には手の届かない高額マンション建設に血道を上げてきました。公営住宅法に基づく低廉な住宅の供給には熱心に取り組まなかったのに、巨大デベロッパーにとてつもない利益を与える事業には巨大な税金を注ぎ込んできたと言えます。京急蒲田西口再開発に注ぎ込みながら、地域経済活性化には効果を発揮できたかは疑問です。

 公共住宅供給政策は大田区の地域経済活性化においても大型開発の駅前再開発型よりもはるかに効果があります。

 京急蒲田駅前再開発には約245億円、糀谷再開発には約199億円、京急東口開発には建設費だけで17億円、立ち退きを求めた東京ガスへの補償金を入れると50億円を超えるなど巨額の税金を注ぎ込みましたが建設は大手ゼネコンが引き受け、下請業者の車のナンバーが群馬や大宮ナンバーなどで品川ナンバーがほとんどなかったことから、どれだけ区民税の税収増につながったでしょうか。それとは対照的に、区営住宅や特養、区立保育園建設はほぼ100%区内業者に発注できます。しかも住宅は38種類ほどの業者が係るとされます。建設業、土木業はもとより、塗装屋さん、空調屋さん、畳屋さんからガラス屋さん、造園業に至るまで仕事が生まれ、従業員さんに給料が支払われ、それを基に近所の商店街に買い物に行きます。税金も区に支払われる確率が大きくなるでしょう。区民税や国保料の収納率の向上は力を入れていますが、本来力を入れるべきは、仕事ができ、収入を増やせて、区民が豊かになって税金を納められるという好循環に努力すべきです。

次に、補助39号線の廃止を求めて質問します。

 補助39号線の起点は、東蒲田2丁目のキネマ通りの途中のT字路です。予定は20㍍幅になるので両側が拡幅される予定です。パール幼稚園の敷地を削り取り、東蒲中学校の体育館の西側敷地を削り取り、呑川の向こう側の気象庁宿舎跡地の真ん中を突っ切ってそのまま南側にある安泰寺の墓地を削り取り、西糀谷の住宅地を押しつぶすようにしてつき進み、環八を横切り、南蒲田や萩中の住宅地をガリガリ削り取るように南進し、蒲田女子高の西側の敷地をかすめとり、本羽田一丁目交差点で補助41号線と交差しそのまま多摩川の堤防にぶつかって終点です。今回、この先に、川崎と結ぶ橋を架ける計画のために土手付近が再検討すべきリストに載りました。

 このような計画は、第一国道が50メートル道路に拡張されつつある今、しかも環八と一国の交差する南蒲田交差点が隧道化に完成したうえに、かつてのにぎわいを見せた町工場の発展に必要とされた道路拡張も残念ながら今や必要性も、緊急性も消え去り、逆にガリガリと削り取られるだけの街になっては、新たな街の発展に障害とさえなっていると考えます。

 もともと補助39号線は昭和21年、今から70年も前に計画されたもので、大田区も空襲での焼野原状態で都市計画されたものです。しかも必要な区域を明確に示す原図がありません。私の委員会での質問に区の担当者は「東京都があると言っている」と答弁しましたがそれは、ぼろぼろの継ぎはぎだらけの青写真集一冊だけで図面のしわはわかっても肝心の地形を見分ける法線がわかりません。住民にしてみれば財産権が奪われるもので、とうてい法治国家として許されません。私も設計技師で民間会社で図面を書いていました。その当時もまだ青焼きといって、青写真でした。設計図面の保管は長くは持たないことは知っています。ところが大田区は、そのような時代につくられた計画なのに、「都市計画道路の完成率が39%と23区の中で最低であり、道路完成は多くの区民に益をもたらすもので整備に取り組んでいきます」と2015年12月に行われた東京都の第4次都市計画道路事業化計画のパブリックコメントで態度表明しています。小池新都知氏は都知事候補の時の「はけの文化と自然を守る会」の公開アンケートに答え「見直しの必要な路線もあると考えています。大昔に決めた都市計画については、大胆に見直しを図っている例もあり、先進事例を参考に東京都の道路行政にどのように反映できるのか検討を進めたいと考えております」と表明しています。ご存知とは思いますが、都市計画法が2003年に改正され、住民のまちづくりの取り組みを都市計画に反映させる制度として①同意する土地所有者とその土地面積が3分の2以上など3要件を満たせば都に受理されるようになり、東京都では1件ですがすでに受理しています。

Q6、補助39号線は「街を破壊するだけで都市計画道路の必要性は無し」との立場に立つべきです。お聞きします。

 また、この都市計画道路のために、せっかく国が公用地の有効活用として大田区に打診してきた気象庁宿舎跡地3000㎡の貴重な土地を保育園も特養ホームにも活用できるのに、建築制限のため、活用は無理と断りの返事を国に大田区はしてしまったようです。住民の皆さんと何度か国交省を訪ねて、公共利用を求めてきましたが、区には一般入札にかける前に公共利用にと大田区に打診してきたのに、断ってしまったというのです。一方で有効だとパブリックコメントで答えておきながら、-方で区民の切実な要求である特養建設や待機児解消の絶好の土地である気象庁跡地の有効利用をあきらめてしまう結果となったのです。 

 気象庁跡地は、国交省に問い合わせたところ、現在、国は公共活用をあきらめ、一般入札の準備をしているとの返事を8月15日にいただきました。

 都市計画道路を条件としても3000㎡で3階までは建築可能です。馬込で運営されている小型特養なら建築可能です。認可保育園も可能です。まして都市計画道路の廃止の可能性も出てきたのですからなお、積極的に土地を確保し有効利用すべきです。

Q7、そこでお聞きします。気象庁跡地の有効利用に全力を挙げるべきです。

次に、わが党の第2回定例会の代表質問に明確な答弁がありませんでしたので改めて今回おききします。

 区内中小企業を公共財、地域の共有財産として守る重要さについて質問します。

 大企業の技術や、商品はNC機械に代表されるように、マニュアルに沿って大量に生産されます。しかし難しいNC機械で作れない製品は、汎用を得意とする下請に発注されます。その特徴は短納期をこなし、難加工をこなし、少量生産もこなします。それが大田区の町工場です。しかも他に例の無いネットワークを持ってこなしています。つまり大企業のように技術も独占して社内でこなしてしまう内省的なやり方と違い、どこにも開放され、何処の注文にも応える社会的財産を形成していると言えます。しかも町工場の収益は、廻しによって、その地域内の産業と雇用に還元され地域社会を潤します。地域の町工場は町内会や消防団、野球チームや祭りにも貢献し、青少年の教育、防災への貢献などしています。町工場の優れた技術とともに、多面的な機能は商店街と共に、大型店にも無い、大企業にも無い、地域社会と区民にとって「地域の共有財産」です。大田区の発展のために、区民税収増の点からも町工場を私的財産としてしか見ていない現在から、社会の共有財産、公共財として位置付けるのが必要ではないでしょうか。

Q8、そこでお聞きします。大田区の産業を公共財として位置付け、その発展のための施策に切り替えることを求めます。お答え下さい。

 大田区は待っているだけの工場があると言いますが、待っている町工場にその値打ちがあることは親会社が一番知っています。ですから「何とか頼む、これをやってもらえないかと他にはできないことを、注文してきます。しかしその頻度が少ないのです。怠けているのではありません。区にはそのすばらしさを知っていただきたいのです。NASAに仕事を納めているすぐれた町工場があるのに続けるのにみあった仕事の量が無いのです。この技術を失っていいのでしょうか。

Q9、そこで公共財としての位置づけが必要です。
 今、ピオで行っている100社規模の取り組みを1000社規模に拡大した規模で、ネットワークを生かした技術で開発、実用化に向け、東松島で開発したような防災面でのさらなるヒントはないか、   福祉面でのオーダーメイド型の車いすや寝たきりの方の寝返りをするのに極端な摩擦無しに等しいシーツはできないか、教育面ではどうかなど区としてリーダーシップをとっていただくことを提案します。またその試作品から実用化まですすめる工場が必用です。お答えください。

次に、後継者問題について提案しましたがこれも明確な答弁がありませんでしたので改めてお聞きします。

 大田区は人材育成事業として「中小企業次世代ものづくり人材の育成事業」に299万円余、若者と中小企業とのマッチング事業に248万円、経営技術指導講習会12回、ものづくり人材育成プロジェクト、工業団体実施研究会10回などやっていますが、これでは真に後継者が育つのか本気度が問われていると思います。このような規模と内容でどれだけの人材が育つでしょうか。

 先日、東六郷の町工場を数件訪問した際、2つの工場で息子がNCしか使えず難加工の注文はいまだに私がやっている。「汎用機械を学ばせたい、そうでないと注文が絶えてしまう」と語っていました。

Q10、そこで、仕事を継承したい若者に、3次元加工など新たな技術の獲得、汎用機の習得、など可能になる、1人につき3年間で200万の援助制度を充実を求めます。職業訓練校のイメージを大規模にしたものです。そのために、後継者を育てる試作品つくり、プロトタイプの工場の設立も必要です。ここには、まだがんばっている難加工をこなす現役の方方の力をかります。喜んで協力してくれることでしょう。1年前の実態調査では、約8割が後継者問題を抱えています。先日委員会で視察した尼崎市では、実態調査に基ずき、産業経済白書を作成し、従業員の給与状況も調査して技術の継承、後継者対策に取り組んでいました。良い経験は参考にすべきです。提案します。お答えください。

 以上ですべての質問を終わります。

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